ジプシーのとき DOM ZA VEŠANJE
1989年/カラー/142分/デジタル・リマスター版(DCP)
『パパは、出張中!』(85)でカンヌに旋風を巻き起こしたクストリッツァが、4年ぶり に発表した叙情詩的大作。ジプシーたちが居住するユーゴのとある小さな村。祖母か ら不思議な魔法を授けられた少年ペルハンは、あくどいジプシーのアーメドに騙され て――。ヨーロッパ中を放浪したジプシーの日常生活を、ひとりの青年の成長記とし て描いた本作は、いかなる束縛からも自由で、本能のままに生きる人物像を好んで描 く監督の作家的傾向が窺い知れる。尚、この作品はジプシーの言葉“ロマ語”によっ て撮られた最初の映画といわれている。ゴラン・ブレゴヴィッチによる音楽は今も聴く 者の耳を離さない。カンヌ映画祭監督賞受賞。
アリゾナ・ドリーム ARIZONA DREAM
1992年/カラー/140分/デジタル・リマスター版(DCP)
1990年にコロンビア大学映画学科の講師として招かれ渡米したクストリッツァがハリ ウッド・スターを起用して描いた、失われつつあるアメリカン・ドリームへの挽歌。アリゾ ナに住む叔父の結婚式に呼ばれた青年アクセルは、夫を射殺した過去をもつ未亡人の 家に住み込み、やがて自殺願望のある娘と恋に落ちるが――。ジョニー・デップ、ジェリ ー・ルイス、フェイ・ダナウェイ、ヴィンセント・ギャロ、ポーリーナ・ポリスコワなどアク の強い個性派俳優を従えて、夢を抱いた人々の切ない希望と悲劇的な挫折を叙情味 溢れる映像で表現した異色作。ベルリン映画祭銀熊賞受賞。
アンダーグラウンド UNDERGROUND
1995年/カラー/171分/デジタル・リマスター版(DCP)
『パパは、出張中!』に続き二度目のカンヌ映画祭パルム・ドールに輝いた本作は、映 画の超異端児にして天才的クリエーター、クストリッツァが祖国旧ユーゴスラヴィアの 50年に渡る悲劇の歴史をブラックなファンタジーとして再構築した一大巨篇。子ども 時代に夢みた幻想的な映像と、ハイスピードなブラスバンドのツービートにジプシー 風哀愁のメロディーが見事に重なりあう。民族紛争の不条理さは21世紀の今見ても胸 に迫る衝撃。映画評論家の故淀川長治氏がラスト・シーンの素晴らしさに「涙で画面 がくもってしまう」と語った、20世紀ベスト10に入る奇跡の一本!
黒猫・白猫 CRNA MAČKA, BELI MAČOR
1998年/カラー/129分/デジタル(DVD)
前作『アンダーグラウンド』が一部で“プロパガンダ”と見当ちがいの批判を受け、引退 宣言をしたクストリッツァが起死回生の一本として作り上げた、一発逆転の大傑作!  それまでのスタッフを排し、撮影に名手ティエリー・アルボガスト(『レオン』『ニキー タ』)、音楽にバンド“ノー・スモーキング”のネレ・カライリチを起用。ドナウ川のほ とりにある町を舞台に若者ザーレの恋、ザーレの父とヤクザが企む列車強盗、ザー レの祖父とマフィアの友情等、三世代の物語が入り乱れるヒューマン・コメディー。 『カサブランカ』(42)をはじめとした、アメリカ映画への憧憬と高い芸術性が見事に 一致した至福の名作。ヴェネチア映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞。
SUPER8 SUPER 8 STORIES
2001年/モノクロ/92分/デジタル(DVD)
『黒猫・白猫』完成後、クストリッツァは息子ストリボールがドラムスを担当している バンド“ノー・スモーキング・オーケストラ”に合流、若き日に熱中したロックにのめり 込む。そして“エミール・クストリッツァ& ノー・スモーキング・オーケストラ”とバン ド名を改めヨーロッパ・ツアーに出る。ジプシー音楽、ロック、スカ、行進曲といった異 なる要素を融合させたミクスチャー・サウンドは“ウンザ・ウンザ”と呼ばれている。映 画は疾走感と生きる喜びに満ちたステージや移動の合間に行ったメンバーへのイン タヴューで構成。モノクロのザラついた映像によるロードムービーの決定版!ジョー・ス トラマーのゲスト出演も見もの。
ライフ・イズ・ミラクル ŽIVOT JE ČUDO
2004年/カラー/154分/デジタル(DCP)
妻に駆け落ちされた鉄道技師のルカ。失意のどん底にある彼をさらなる不幸が襲う。軍 に徴兵された息子が敵の捕虜に。あげくの果てに彼のもとへやってきた捕虜交換要員が 魅力的な美人で、彼女に恋心を抱いてしまう――。のっぴきならない状況下で最後に彼 が下した決断とは?牧歌的なボスニアの田舎を舞台におおらかなユーモアで逞しい庶 民の日常を描いた本作は、愛と希望に満ちたラブストーリーの傑作!ロバ、アヒル、ネ コ等、動物たちに絶妙な演技を披露させてしまう魔術的演出、おなじみノー・スモーキ ング・オーケストラによるポップな音楽で気分は最高!2005年セザール賞最優秀ヨー ロッパ作品賞受賞。
1954年旧ユーゴスラヴィアのサラエボ(現在はボスニア・ヘルツェゴビナの首 都)生まれ。父は役人で裕福な家庭に育ったがサッカーとロックに明け暮れ、 見かねた両親によってチェコのプラハ国立映画学校に留学させられる。最初は さほど映画に興味はなかったが同校で才能を開花させ、81年に発表した初長 編『ドリー・ベルを覚えてる?』でヴェネチア映画祭新人監督賞を受賞し、鮮烈 なデビューを飾る。二作目の『パパは、出張中!』(85)で早くもカンヌ映画祭で パルム・ドールに輝き、以後新作を発表する度に国際的な映画祭で主要賞を獲 得。奇想天外な着想と唯一無二の映像感覚で傑作を連打する欧州最大の映画 作家。現在は“イタリアの名花”モニカ・ベルッチ(『007/スペクター』)が主演 し、クストリッツァ本人が共演する最新監督作『ON THE MILKY ROAD』(原 題)が待機中。セルビアを代表する映画監督である。
TOP