映画の世界では巨匠、名匠、天才、鬼才と言われる人たちがたくさんいます。けれども“神”と呼ばれる にふさわしい監督はジョン・フォードを置いて他にはいないでしょう。１８９４年、アイルランド出身の 両親のもとに生を受けた彼は、アカデミー監督賞を史上最高の４回（男の敵、怒りの葡萄、わが谷は緑なり き、静かなる男）も受賞したアメリカ映画の父です。社会主義的自由主義者で常に左と自分を規定しつつ、 ノルマンディー上陸作戦にも参加した大の海軍好きという多面的な顔をもつ彼は、あらゆるジャンルの作品を 手がけたオールマイティーの巨人と言えます。他の追随を許さない明快な映像美学と“男のロマン”を終生追 い求めたジョン・フォードの作品群は映画の歴史そのものです。

彼がいなければ西部劇というジャンルはアメリカ映画史のなかで確固たる地位を築けなかったに違い ありません。１９０７年生まれ。アイルランド系の両親をもつ彼は、映画における“西部の男”を体現化 したアメリカ映画最強最高のスターです。ジョン・フォード監督に乞われ出演した「駅馬車」で地位を確立。 １９６８年、「勇気ある追跡」（コーエン兄弟が２０１０年「トゥルー・グリット」としてリメイク）でアカデミー主 演男優賞を受賞しています。黒澤明、三船敏郎のコンビを思わせるフォード、ウェインで作られた数多くの映 画はアメリカ映画の至宝。無骨な顔をもつタフガイでありながら女性にはおくてという愛すべきキャラクターは 映画俳優の粋を越えアメリカ合衆国のアイコンともいえるでしょう。