『O侯爵夫人』に続いてつくられた異色の歴史劇。ファブリス・ルキーニ演じる野蛮で無知な若者ペルスヴァルは、騎士になることを目指し冒険の旅に出る。原作は、フランス中世最大の物語作家クレチアン・ド・トロワの未完の騎士物語。ロメール作品では珍しく大掛かりなセットと製作費を要した本作。中世の細密画のように平板な画面のなかで、奇想天外なファンタジーが展開される。
年上のいとこマリオンと、ノルマンディの別荘へヴァカンスにやって来た15歳のポーリーヌ。6人の男女の恋愛ゲームであり、大人との端境期にある少女のひと夏の恋物語でもある本作は、ロメールの美少女映画の傑作。輝く太陽光のなか、海辺や木々の下ですてきなリゾートファッションに身をつつんだ女たちにうっとりと見惚れてしまう。ベルリン国際映画祭銀熊賞・国際批評家連盟賞受賞。
技術者の“私”は、冬の夜、旧友と共に美しい女医モードの家を訪れる。互いに惹かれあうも、カトリック信者で生真面目な“私”と無神論者のモードの恋愛に対する考え方は噛み合わず、ふたりは奇妙な一夜を過ごす。無垢な女学生と現代的な大人の女性との間を揺れうごく男を演じるのは、『暗殺の森』のジャン=ルイ・トランティニャン。美しい映像と会話劇で描く、大人の男女の愛の駆け引き。
避暑地アヌシーで旧友の作家オーロラと再会した外交官ジェロームは、たわいもない会話から、ふたりの若い娘たちを誘惑することに。結婚を間近に控えた中年男が10代の少女の膝に執心するという一見不道徳な物語だが、ロメールらしい官能性とふしぎな可笑しみが見る者の目を釘付けにする。少女たちの輝く肉体とネストール・アルメンドロスによる美しい映像が、見事なアンサンブルを奏でる。
インテリアデザイナーのルイーズは建築家の恋人レミと郊外で同棲中。だが自由を求める彼女は、パリに自分だけのアパートを持ち、妻子持ちのオクターヴと遊び歩いていた。二人の男、二つの家の間で揺れ動く女の繊細な感情が織りなす恋愛劇。パスカル・オジェ(ビュル・オジェの娘)は本作でヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞するも、その直後25歳の若さで急逝した。撮影はレナート・ベルタ。
友人と過ごすはずのヴァカンスを突然キャンセルされたデルフィーヌ。友人に誘われ南仏へ出かけるが、周囲に馴染めずパリへ戻ってしまう。ひとりでビアリッツへ来た彼女は、ジュール・ヴェルヌの小説に書かれた、日没前に一瞬だけ見える「緑の光線」の話を耳にする。愛と幸福を求める孤独な女のヴァカンス物語。光あふれる映像と感動的なラストが胸をうつ。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞。
仕事も私生活も充実しているフレデリックの楽しみは、街なかで女たちを観察し夢想にふけること。やがてその夢想は、若く美しい女クロエとの出会いにより、午後数時間だけの逢瀬へと発展する。不倫にはまる中年男の悲喜劇ともいえる本作は、教訓シリーズの完結編。夢のシーンには他作品の出演女優たちが登場。実際の撮影は7週間だが、映像ではパリの季節の推移がしっかりと感じられる。
フランス革命直後のイタリア北部を舞台に、ドイツの文豪クライストの原作を忠実に映画化した歴史劇。台詞もすべてドイツ語で、撮影はフランケン地方にある城で行われた。物語はひとつの新聞広告から始まる。身に覚えのない妊娠をしたO侯爵夫人は、子の父親に名乗り出るよう呼びかけるが…。繊細な照明を用いた画作りには、ドイツ・ロマン派の画家フュースリの『夢魔』が参考にされたという。
対照的なふたりの少女が体験する4つのふしぎな冒険譚。ふたりの出会いを描いた〈青い時間〉、パリのカフェを舞台にした〈カフェのボーイ〉、犯罪をめぐる対話〈物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師〉、レネットの絵を売ろうと奮闘する〈絵の売買〉。ロメールは、レネット役のジョエル・ミケルから聞いた話をもとに本作を企画したという。少人数のスタッフと16ミリフィルムで撮影された可愛らしい作品。
恋に臆病な市役所職員ブランシュと現実的な学生レアは、ふとしたきっかけで友だちに。ブランシュは遊び人のアレクサンドルに思いをよせるが、彼の前では緊張してばかり。一方レアは恋人ファビアンとの関係がうまくいかず、ファビアンはブランシュに惹かれていく。4人の男女がパリ郊外のニュータウンで繰り広げる、ちょっと笑えて最高にハッピーな恋愛模様。80年代のカラフルなファッションも魅力的!
ロメールが友人バルベ・シュレデール(バーベット・シュローダー)と構想した教訓シリーズ1作目。16ミリで撮られた本作では、シュレデールが主演の青年を演じ、吹き替えを映画監督のベルトラン・タヴェルニエが担当。ブロンド娘とパン屋の娘、二人の女の間で彷徨い歩く青年という構図は、このシリーズの基本プロット。
*『シュザンヌの生き方』と併映
大学生ベルトランは、アイルランドからの留学生ソフィーに密かな好意を抱いている。一方、カフェで知り合ったシュザンヌは友人のギヨームに夢中だが、ベルトランはそんな彼女をどこか軽蔑している。主人公の独白によって物語が語られていくなか、パリの街の喧騒や風景が、白黒の画面のなかでリアルに映し出される。
*『モンソーのパン屋の女の子』と併映