『ミューズ・アカデミー』はもちろんフィクション映画ですが、本物の感情を土台とし、 〝人生の諸断片〞を土台とする映画でもあります。
映画は、愛や誘惑、創造、嫉妬、力の対立、教育、そして、ごまかしといった、私たちの身近にある事柄にも及んでいくのです。
この映画で語られるミューズは、私たちのまわりのそこら中にいます。
ですが私は彼女たちの名前さえも知りません。
彼女たちは、自分がミューズだとは自覚していないからです。
ミューズ、それはつまり私たちの〝投影〞によって存在する女性であり、私たちが絶対に〝知りえない存在〞なのです。
1960年、スペイン、カタルーニャ州バルセロナ生まれ。本名はホセ・ルイス・カロッジオ・ゲリン。 国際的な映画作家として活躍しながら、バルセロナにあるポンペウ・ファブラ大学(UPF)の教授もつとめている。 1983年、セゴビアの辺鄙な農村で撮影した初の長編映画『ベルタのモチーフ』を監督。 その後、ジョン・フォード監督の『静かなる男』のロケ地となった村を舞台にした異色の記録映画『イニスフリー』を発表し、国際的に注目を集める。 その後も『影の列車』『工事中』といった劇映画や記録映画を製作。長編劇映画『シルビアのいる街で』は世界各国で話題を呼び、 2008年の東京国際映画祭の上映時にはゲリンが初来日,2010年の公開時に再び来日した。 この作品で多くの映画祭や上映に招かれた際の記録として旅日記風の記録映画『ゲスト』を製作。 また、バルセロナ現代文化センターの展示用に製作した『メカス×ゲリン往復書簡』やチョンジュ映画祭の依頼による『ある朝の思い出』、 ラ・ロシェル映画祭の依頼による『サン=ルイ大聖堂の奴隷船サフィール号』など、ヴィデオ作品やインスタレーション作品も多数手がけている。 最新作『ミューズ・アカデミー』は2015年ロカルノ国際映画祭でワールドプレミア上映され、セビリア・ヨーロッパ映画祭で金ヒラルディージョ賞を受賞。 東京国際映画祭ほかでも上映された。常に劇映画(フィクション)と記録映画(ドキュメンタリー)を行き来するような実験的な作風で創作活動を続ける。 現代映画を代表する作家である。
『ベルタのモチーフ』(1983年/35ミリ/120分)
『思い出』(1985年/16ミリ/5分)
『エウラリアとマルタ』(1988年/35ミリ/18分/オムニバス映画『都市生活』の1篇)※
『イニスフリー』(1990年/35ミリ/108分)
『影の列車』(1997年/35ミリ/82分)
『工事中』(2001年/ヴィデオ&35ミリ/133分)
『シルビアのいる街の写真』(2007年/ヴィデオ/67分)
『シルビアのいる街で』(2007年/35ミリ/85分)
『ゲスト』(2010年/ヴィデオ&35ミリ/133分)
『アナへの2通の手紙』(2010年/ヴィデオ/28分)
『メカス×ゲリン 往復書簡』(2011年/ヴィデオ/100分/映画による往復書簡)※
『ある朝の思い出』(2011年/ヴィデオ/45分)
『サン゠ルイ大聖堂の奴隷船サフィール号』(2015年/ヴィデオ/35分)
『ミューズ・アカデミー』(2015年/ヴィデオ/96分)
『われわれの知らない女性たち』
第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2007年6月~11月)、バルセロナ現代文化センター(2008年1月~3月)にて展示

『コリントスの女』
エステバン・ビセンテ現代美術館(2010年12月~2011年6月)、ポンピドゥー・センター(2012年12月~2013年1月)にて展示《本作の一部を『アナへの2通の手紙』として上映します》


※印の作品は本特集では上映されません。